危急時遺言

過去に1度だけ危急時遺言の口授筆記証人を経験したことがあります。
遺言と言えば普通方式の遺言=自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言は広く知られていると思います。
 私が経験したのはいわゆる死亡危急時遺言で、遺言者の入所施設で遺言書作成を行いました。
遺言者の発する言葉を書きとめて、遺言の体裁にして、本人に読み聞かせ、証人(口授筆記者+2名)も確認の上署名押印しするのですが、これが簡単ではなく、結構時間がかかるのです。
 事前にある程度どんな財産が何処にあるのかも、前提知識としてもっていないと、そこですぐに作成するのは難しいかもしれません。
 実はその後も、色々な手続を行わなければなりません。

 第1に遺言書作成日から20日以内に遺言書確認の申立を家庭裁判所に申立を行う必要があります(20日以内に行わないと失効してしまうからです)。
 私は戸籍の取り寄せやらで10日後に確認の申立を行いました。
 そうすると、今度は裁判所調査官が、遺言者のもとに出向き、遺言書がその真意に基づいて作成されたものかどうかを調査するのです。しかし、残念ながら、私が担当したこの事件では確認申立を行った翌日に遺言者は亡くなってしまいました。

 そうすると、裁判所調査官は今度は聞き込みを開始します。
 証人3人に会うのはもちろんのこと、遺言時の前後の遺言者の状態を入所施設や病院に、医師にも面会して、その遺言が真意に基づいたものかどうかを調査していました。
 遺言書には遺言者が生前お世話になった福祉施設に寄付するという項目もあったので、調査官はそこにも出向き、生前の遺言者との関係も施設の職員に尋ねていました。
それから、裁判所調査官が私と面接した際に調査官からこんなアドバイスを頂きました。
非常に印象に残っています。

調査官「佐田先生、確認の申立が作成日から10日後になっていますがどうしてですか?」

私 「えーット、それはまあ、戸籍とか取り寄せていたら、すぐ時間が経過してしまって、まあでも私としてはそんなに申立が遅いと言う認識はないのですが」

調査官「先生、この危急時遺言と言うのは、遺言者が自分の死が近いことを自ら悟って、最後に残っているわずかな力で何とか自分の意思を残そうとしたものですよね」

 私 「それは良くわかっているつもりです」

調査官「だから遺言書を作ったら、可及的速やかに、裁判所が確認を行うべきで、できるだけ本人からその意思を確認したいと私たちは思っています」

 私「なるほど」

調査官「ですから、今後また、遺言の確認の申立をする機会があるようなら、まずは遺言書作成の翌日にでも確認申立をしてください。他の必要書類は後から裁判所に追完していただければ、それでいいんです」

 後日、家事審判官からの審問も受け、遺言書は「遺言者の真意に基づいて作成されたものである」との確認を受けました。
 ただ、こんなに大変な思いをして確認を経ても遺言書作成後6ヶ月以上遺言者が生存していると、結局遺言書は失効してしまうのです。
第2に遺言書の検認手続きを行う必要もあります。

私は遺言で遺言執行者に選任されていたので、それから、各相続人に就任の報告を行い、遺言執行の業務開始となったのですが、遺言執行の事務についてはまた次の機会に。


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