2月2009

遺言書の検認

公正証書遺言であれば、この手続きは不要です

しかし、そうでない場合、自筆や秘密証書遺言だと、この手続きがひつようです。戸籍・除籍を被相続人が出生から亡くなるまで取得し(相続登記より厳しいです)、時にはそれ以上の調査をして相続人を特定する必要があります。
申立後は検認期日呼び出し状が相続人に送達されます。この期日に封があるものは、開封され、現状を相続人と裁判所で確認します。
私はこの期日に相続人同士が罵倒しあい、修羅場になった場面に遭遇したことがあります。
前に紹介した確認期日よりもどろどろした感じでした。
封も期日に出頭した相続人の前で開封されます。詳しくは書けませんが、過去には偽物だったこともあります。
 

ネットワークビジネス(マルチ商法の販売員)で儲けた金

ネットワークビジネス(MLM)で数百万円以上のお金を儲けた方から相談を受けることが、たまにあります。
ある方は、破綻したMLM会社の破産管財人から、儲けたお金を不労所得=不当利得として返還請求を受けていました。
事情を伺うと、ネットワークビジネスの虜になっていて、相当の人数を加入させて、利益を上げていました。その他数種のネットワークビジネスにかかわっていました。
個人間の貸し借り、名義貸しなどフルコースといった感じで、負債が2000万円ほどになっていました。
色々本人と検討した結果、個人再生(給与所得者再生)の申立てをすることにしました。
幸い、不当利得の返還請求債務も5分の1に圧縮でき、何とか再生計画も認可決定されました。
私と事務所で面談し再生計画の履行について説明していた時には、本人はそれまでの半生はネットワークビジネスに手を染め、周りに迷惑ばかりかけていたので、今後は地道に働いて子供を育てたいと、抱負を語っておられました。
今は返済も終わり、本人は生活再建を果たすことができました。
依頼者が多重債務から抜け出し、立ち直って行くの場面を目の当たりにしたときこそ、借金問題に携わる専門家としても一番達成感を感じます。
それと同時に今後世の中がますます不景気になり、悪質なネットワークビジネスが跳梁跋扈するのでないかと懸念されます。

破産と名義借り(詐欺による不法行為債権!)

 破産の申立の依頼者の中には友人知人、親戚に名義を借りて商品を購入したり保険契約を締結している場合があります。
 特にネットマークビジネス(いわゆるマルチ商法)をシャカリキになってやっている方、保険の外交員をしている方の中には自分はやっていなくても、周りで目にすることがあるのではないでしょうか。
 仕事を頑張っては見たものの、結局うまくいかず破産を決意しましたと言って事務所に相談にこられます。
 この名義借りをして、破産してしてしまう場合、問題が残ります。
「あなたには絶対に迷惑をかけないから、返済(あるいは保険の掛け金)は私が責任をもってする」といっている場合がほとんどです。
 この返済の約束も名義を借りた人に対しての債務になるからです。
 この債務を債権者一覧表に載せるわけですが、この名義借りを複数人に依頼している方がおられます。結局本人は支払い義務がなくなりますが、名義を貸した人は怒り爆発です。
「約束が違う、だましたやろー」となります。
 支払義務が名義貸しをした人には残ってしまうからです。
 本人はその当時は本当に絶対に迷惑をかけないと思っていたことでしょう。 
 しかし場合によってはこの名義借り行為自体詐欺だと認定されてしまうことがあります。
 3人以上の人に対し名義借りをしていると常習性ありと認定される可能性が高くなります。
そうすると詐欺による不法行為に基づく損害賠償債務ということになり、結局免責されない債務となってしまいます。
 またその当時の本人の収入や財産状況も重要なポイントになりますが、破産を決意する状態まで追い込まれた人の状況は容易に想像できるでしょう。
 名義借りは結局何倍ものツケを払わなければならないことになるかもしれません

過払いの時効の起算点

10分ぐらい前に朝の情報番組(関西ローカル)で過払い金の取り戻しついて弁護士の先生が開設していました。そこで少し気になったことがあります。私がここ最近のどに魚の小骨がひっかかっているような、そんな感じの疑問です。先日の1月22日の最高裁判決はただ単に取引が中断しただけでは、消滅時効は進行しないというふうに読めるからです。時効の進行を始めるが、再借入すれば当然に充当されるとは言っていません。そうすると、貸金業者と明確な取引終了の意思の表示、解約、債務整理通知がなければ時効は進行しないことになります。ただ単にATMで完済し、10年経った場合は、時効は完成していないのでしょうか。判例ではそのように読めるのですが。この点はまた、検討したいと思います。

危急時遺言

過去に1度だけ危急時遺言の口授筆記証人を経験したことがあります。
遺言と言えば普通方式の遺言=自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言は広く知られていると思います。
 私が経験したのはいわゆる死亡危急時遺言で、遺言者の入所施設で遺言書作成を行いました。
遺言者の発する言葉を書きとめて、遺言の体裁にして、本人に読み聞かせ、証人(口授筆記者+2名)も確認の上署名押印しするのですが、これが簡単ではなく、結構時間がかかるのです。
 事前にある程度どんな財産が何処にあるのかも、前提知識としてもっていないと、そこですぐに作成するのは難しいかもしれません。
 実はその後も、色々な手続を行わなければなりません。

 第1に遺言書作成日から20日以内に遺言書確認の申立を家庭裁判所に申立を行う必要があります(20日以内に行わないと失効してしまうからです)。
 私は戸籍の取り寄せやらで10日後に確認の申立を行いました。
 そうすると、今度は裁判所調査官が、遺言者のもとに出向き、遺言書がその真意に基づいて作成されたものかどうかを調査するのです。しかし、残念ながら、私が担当したこの事件では確認申立を行った翌日に遺言者は亡くなってしまいました。

 そうすると、裁判所調査官は今度は聞き込みを開始します。
 証人3人に会うのはもちろんのこと、遺言時の前後の遺言者の状態を入所施設や病院に、医師にも面会して、その遺言が真意に基づいたものかどうかを調査していました。
 遺言書には遺言者が生前お世話になった福祉施設に寄付するという項目もあったので、調査官はそこにも出向き、生前の遺言者との関係も施設の職員に尋ねていました。
それから、裁判所調査官が私と面接した際に調査官からこんなアドバイスを頂きました。
非常に印象に残っています。

調査官「佐田先生、確認の申立が作成日から10日後になっていますがどうしてですか?」

私 「えーット、それはまあ、戸籍とか取り寄せていたら、すぐ時間が経過してしまって、まあでも私としてはそんなに申立が遅いと言う認識はないのですが」

調査官「先生、この危急時遺言と言うのは、遺言者が自分の死が近いことを自ら悟って、最後に残っているわずかな力で何とか自分の意思を残そうとしたものですよね」

 私 「それは良くわかっているつもりです」

調査官「だから遺言書を作ったら、可及的速やかに、裁判所が確認を行うべきで、できるだけ本人からその意思を確認したいと私たちは思っています」

 私「なるほど」

調査官「ですから、今後また、遺言の確認の申立をする機会があるようなら、まずは遺言書作成の翌日にでも確認申立をしてください。他の必要書類は後から裁判所に追完していただければ、それでいいんです」

 後日、家事審判官からの審問も受け、遺言書は「遺言者の真意に基づいて作成されたものである」との確認を受けました。
 ただ、こんなに大変な思いをして確認を経ても遺言書作成後6ヶ月以上遺言者が生存していると、結局遺言書は失効してしまうのです。
第2に遺言書の検認手続きを行う必要もあります。

私は遺言で遺言執行者に選任されていたので、それから、各相続人に就任の報告を行い、遺言執行の業務開始となったのですが、遺言執行の事務についてはまた次の機会に。

おまとめローンのダイレクトメール

 昨日、某銀行(消費者ローン返済のためのおまとめローンのTVCMを流している銀行)から事務所あてにダイレクトメールが届きました。封を開けるとやはりおまとめローンの案内リーフレットでした。やたらめったらに送りつけてるんですね。

1月22日最高裁判決以前の準備書面

 1月22日の最高裁判決以前、再貸付による取引の分断と消滅時効を主張していた相手方への反論内容です(準備書面から一部抜き出しています)。この最高裁判決とぴったり沿った内容になっていたのでほっとしました。

準備書面抜粋
1 取引の個別性についての反論
被告は平成15年7月18日最高裁判決をはじめ、同年9月11日、同年同月16日付の最高裁判決引用し、本件各貸付と返済については各個別取引であり、利息においても一回ごとの貸付額で利息制限法を適用すべきであるとしているが、明らかに誤りである。同7月18日最判において、被告は当事者の合理的意思を配慮したかのように述べているが、実際には最高裁は推認できる借主の合理的な意志を重視したのであり、事実「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は借入の総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから、弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され、これに対する債務の弁済の指定が無意味となる場合には特段の事情がない限り、弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる」と判示した。さらに利息制限法の潜脱を目的とした被告が原審で主張していた民法136条2項ただし書の適用についても「法1条1項1号及び2条に規定は金銭消費貸借上の貸主には、借主が実際に利用することが可能な貸付額とその利用期間を基礎とする法所定の制限内の利息の取得のみを認め、上記各規定が適用される限りにおいては、民法136条2項ただし書の規定の適用を排除する趣旨と解すべき」として、貸主の期限利益は保護ざれないものとして、各貸付に対する返済期限までの利息の収受を認めなかったのである。本最高裁判決は本件と同様に、基本契約に基づいて手形貸付が数口並存して行われていた事案であり、民法136条2項ただし書を根拠にした被告の各貸付の返済期限までの利息を収受できる旨の主張に対し、借主が実際に利用できる金額の限度でしか利息の収受を認めないとする強行法規である利息制限法の基本原則を踏まえ、借主の合理的な意思を推認して即時充当の結論を導き出したのである。

(中略)

  平成19年6月7日最高裁判決は、「各基本契約は同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入金に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する合意を含んでいるものと解するのが相当である」とし、やはり借主の合理的な意思を推認し、過払金発生後の後発の借入に対する即時充当を認めている(もっとも、平成19年7月17日最高裁判決によれば、必ずしも基本契約がなくても継続的な金銭消費貸借取引が行われていた場合においても同様の即時充当の結論を導いている)。

(中略)
1 後の貸付金にも充当される
昭和52年6月20日最高裁第2小法廷判決は,550万円の借入を必要とする借主に対し2口合計1100万円を貸し付け,うち600万円を即時両建拘束預金とした事案で,「右取引条件の故に実質金利が利息制限法1条1項所定の利率を超過する結果を生じ,ひいては遅延損害金の実質的割合も同法4条1項所定の割合を超過する結果を生じてしまっている以上,右超過部分は,同法の法意に照らし違法なものとして是正しなければならない」「その方法としては,前記各即時両建預金が存在しているため実質金利が利息制限法に違反する結果を生じていた期間中,本件貸付契約中利率及び遅延損害金の割合に関する約定の一部が無効になるものとして是正するのが相当であり,上告人が支払った利息のうち実質貸付額550万円を元本として利息制限法1条1項を超過した部分は,民法488条又は489条により,本件貸付契約又は本件別口貸付契約の残存元本債務に充当されたものと解するのが相当である。」と判示し,本来なら借りないで済んだ超過貸付額を差し引いた実質貸付額についてのみ利息が発生するとした。
同判決が「超過部分は,同法の法意に照らし違法なものとして是正しなければならない」と利息制限法の強行法規性から導かれる違法是正機能を実質貸付理論の根拠としている以上,過払い状態となった後,これを秘匿して返さないで貸し付けた超過貸付に対し利息を取ることも是正されなければならず,借りないで済んだ超過貸付額を差し引いた,すなわち充当後の実質貸付額についてのみ利息が発生することとなる。過払い後に貸付けに際して交付される金員は,不当利得金が貸金業者の手元に拘束されずに返還されていたとすれば借りないで済んだ金額であり,超過貸付として実質貸付額から差引かれるべきものであって実質貸付額ではない。
2 被告の時効の主張について
(1)仮に被告の主張するとおり,本件の取引がAの取引とBの取引に  分かれるとしても,Aの取引によって生じた過払い金はB取引が継続 している間は消滅時効は進行しない。いったん過払い金が発生しても,これがその後の貸付にかかる債務に充当される可能性がある状態が継続することになるから,それぞれが完済扱いとなったり,あるいは原告のほうで以後の追加貸付けを断念して明確に取引を終了させて過払い金返還請求をするなどしない限り取引継続中の個々の過払い金返還請求権の消滅時効は進行しないのである。したがって本件のAの取引の過払い金及び利息金の支払い請求権は時効消滅していない。

任意後見制度概略

任意後見制度の概略です

3 任意後見制度

1 任意後見契約に関する法律(抜粋)
(任意後見契約の方式)
第3条  任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
(任意後見監督人の選任)
第4条  任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
(2項以下略)
(任意後見監督人の欠格事由)
第5条  任意後見受任者又は任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。

2 任意後見の流れ
 任意後見契約の締結(自己の判断能力が低下した時に、財産の管理を任意後見人予定者に任せることを予め定めておく契約)→任意後見の登記

判断能力の低下

任意後見監督人選任の申立て

任意後見監督人選任によって契約発効(選任審判には即時抗告不可)

3 申立てに必要な書類
①申立書   ②診断書(成年後見用診断書)
③(a)申立人  戸籍謄本(本人以外の者が申立てる時)
 (b)本人   戸籍謄本、戸籍附票、後見登記事項証明書
④その他
 (a)任意後見契約公正証書写し
 (b)任意後見監督人候補者を記載する場合は、これに関する書類(戸籍謄本、住民票、身分証明書、成年後見に関する登記事項証明書)等
その他 収入印紙800円 登記印紙2000円 郵便切手相当額

4 費用について
(1)公正証書・(任意後見契約・継続的見守契約、遺言、死後事務委任契約)
(2)預り金(死後事務報酬・葬式費用等)
(3) 後見人報酬
(4)後見監督人報酬

平成20年(受)第468号・平成21年1月22日付最高裁判決後の最初の期日

同判決後の最初の期日が今日ありました。
本人訴訟支援で同行してきたのですが、次回は3月6日以降になりました。やはり相手方は来月の3月6日の第二小法廷の最高裁判決を確認したいようでした。
この判決は、こちらに随分と有利な判決ですが、何かすっきりしないものがあります。ここ最近の充当判例の特色ですね。今後検証していきたいと思っています。以下は自分の論点の整理のためにアップしますのであまり参考になりません。

以下抜粋
2 平成20年(受)第468号・平成21年1月22日付最高裁判決について
(1)基本契約と充当の合意について
充当に関する新たな判断が最高裁第一小法廷でなされたが、同最判は「上記基本契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。」として金銭消費貸借取引が継続的に繰り返されることを予定した基本契約には充当の合意が含まれていることを明示した。
 
(2)消滅時効について
 
(ア)また同最判は
「借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)」と2つの最高裁判決を引用した上、過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することはできないとしている。
 
(イ)その上で
    「したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と結論付けている。

(ウ)引用されている平成19年6月7日第一小法廷判決は平成20年6月7日付原告準備書面でも引用したとおり、基本契約に基づいた取引から発生した過払い金が後に発生する借入金に即時充当されることを判示したものである。

(エ)では上記(イ)の「同取引が終了した時点」とはいった何時をいうのか。その点については、もう1つの引用判例である、平成19年4月14日第三小法廷判決が重要な意味を持つ。同判決は、1年ごとに自動更新が繰り返される自動継続特約付定期預金の消滅時効について、「消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が,(原告において省略)預金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求することを前提に,消滅時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することができると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契約の趣旨に反するというべきである。そうすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。以上によれば,自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,預金者による解約の申入れがされたことなどにより,それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものと解するのが相当である。」と判示し、具体的な障害が排除され、解約等の自動継続の明確な停止事項が生じた時から、消滅時効は進行するとしたのである。

 (オ)上記2つの引用された平成19年最高裁判決を踏まえて、平成21年1月22日最高裁判決を虚心坦懐に読めば以下のとおりの結論が導き出される。
 
 ①金銭消費貸借が繰り返される取引を予定した基本契約においては同契約に基づく取引から生じた過払金を、弁済当時存在する他の借入金に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでも、その後に発生する新たな借入金債務に充当する合意を含んでいる。

  ②継続的な金銭消費貸借取引の単純な一時中断の場合、借主が取引を継続させる義務を負っている訳ではないから、中断時点で過払い金の消滅時効の進行が始まる訳ではない。取引を再開する可能性がある以上、過払い請求に対する実質的な障害事由が排除されたとは言えないから、結果として取引中断後、その取引が再開された場合は即時に充当される。従って単純な中断時点から消滅時効が進行するのではなく、契約の解除、破産や債務整理の通知等具体的な契約の終了事由が生じた時点で進行を始める。

3 本件取引について
以下略