相続登記の重要性(1)

相続問題を受任後
 司法書士は戸籍調査を通じていろいろな情報を確認します。
法定相続関係の特定、とくに養子、認知した子がいないか、離婚した妻との間に子供がいないか等を確認していきます。
そして、相続人全員を確定して、相続人間で話し合ってもらって、相続人の皆さんの意向を聞いて、遺産分割協議書という書類に具体化していいきます。それで、相続登記を申請することになります。
 今までは、司法書士自身相続登記の重要性についてその真実を語ることをためらっていたのではないかと思います。業界エゴになるのではとね。
 しかし、最近になって、相続登記の未老不動産が様々な弊害となって、表面化してきたのです。
 
 子供のいない兄弟相続、原野商法にひかかったことを隠そうとした親、遠隔地の管理できない承継不動産などなど、原因は様々です。
 近年空き家問題とともに、相続登記未了不動産が震災復興の妨げになっていることがクローズアップされ、相続登記の重要性が色濃く認識されるようになりました。
 今後の日本の人口減少問題とリンクし、深刻な問題となています
 


成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律

  本年4月に成立した「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が10月13日に施行されました。
 主に、成年被後見人宛の郵便物を後見人に裁判所の審判を経て転送できるようになること、一定の死後事務ができるようになること、この2点が改正点です。
 誤解されがちですが、いずれの規定も、成年後見人の権限を拡大したものであり、義務を定めたものではないといことです。
成年後見人に対する郵送の嘱託は、被後見人の財産調査(株式、投資信託、外貨預金等)をする上では、有用な制度ですが、憲法21条2項で通信の秘密の規定を踏まえ、その運用には十分な注が必要です。本人の情報が十分に把握できているケースの場合は、当該嘱託は不要であると考えられます。また一定の死後事務についても、成年後見人の権限の範囲内であることが、民法上明記されました。
 

以下条文

 (成年後見人による郵便物等の管理)
 第八百六十条の二 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
 2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
 3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
 4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
 第八百六十条の三 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
 2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
 3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。
 
  (成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
 第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
  一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
  二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
  三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)

法務省の解説はこちら
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00196.html


新しい後見の姿

①専門職後見人の育成
 私たちは司法書士という職業で、家庭裁判所をはじめ社会の中では専門職後見人という評価を得ています。しかしながら、司法書士という資格だけでは、専門職後見人と資質はそなわっていないという、高見さんの意見はその通りだと思います。ですので、司法書士会では、成年後見センター・リーガルサポートという別法人を平成11年に設立し、成年後見の職務に必要な知識の習得を目的として、一定単位の研修受講を義務付けています。その内容も法律だけではなく、認知症や、精神障がい者の方がに対する理解、社会保障や、支援する方々等の役割等についても知識を深めており、更に倫理感の醸成にも努めています。また、リーガルサポートに対して後見業務に関する報告をコンピュータシステムを使用して提出を義務づけ、不正の対策防止を行っています。
②利用率の向上 冒頭のあいさつでも申しましたが、やはり、成年後見制度はまだまだ、普及しておらず、一般の方から見れば、利用しにくいイメージがあるのだと思います。現在の成年後見制度は確かに硬直的な部分が多々あり、実際使いづらい面もあるのは確かです。一度成年後見が開始すると、実際には本人が亡くなるまで、後見が終了することは原則とありません。人生の一場面でのスポット的な利用法等柔軟な制度へ改革していく必要があるのでないかと感じています。
今年4月には成年後見制度利用促進法が成立し5月には施行されています。今後は政府、専門職団体主導のもと、制度そのものが改革されいくことになっています。それに期待したいと思います。
 
③市民後見人の育成
市民後見人についても成年後見制度利用促進法にその育成の促進が規定されています。
市民後見人の位置付けをはっきりさせておきたいと思います。専門職後見人後見人でもなく、親族後見人でもない後見人です。地域社会の中で社会貢献として活躍している後見人です。活躍している市民後見人は、専門職後見人である司法書士や弁護士、社会福祉士の支援を受けて活躍しています。  
定期的に市民後見人と被後見人が住んでいる地元の市役所で、司法書士などの専門職後見人が市民後見人の相談を受けて、週に1回程度、被後見人ものとを訪問して、寄り添う形で後見業務を行っています。
 大阪では特に大阪市が日本全体の中でも、先進的に市民後見人の育成に取り組んできました。
 大阪市では平成20年1月、つまり今から8年半前に市民後見人第1号が選任されました。現在までに大阪府内で160名以上の方が活躍しておられます。
 


JR東海事故714条最判振り返り:監督責任(2)

一審の名古屋地裁判決、二審の名古屋高裁の控訴審判決にしても、成年後見は当然のように、民法714条の法定監督義務と認定されていましたので、そこが、専門職後見人と位置付けされている司法書士として、まずいところだと思ってました。平成11年12月に改正民法が成立して現行の成年制度に改められました。それまでは民法858条旧規定では
「禁治産者の後見人は、禁治産者の資力に応じて、その療養看護に努めなければならない。」とされていました。これを後見人の療養看護しなければならない義務と考えられていました。
改正後は、「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」という規定に変わっています。成年後見人は被後見人の生活全般に配慮しなさいという規定になっていて改正された時点で、成年後見人は完全に法定監督義務から解放されたはずだと思っていましたので、最高裁判決で成年後見人は法定監督義務者ではないという認定がされてやっとまともな結論になって胸をなでおろしました。
 
 また、一審二審とも家族、身内の責任を認めていました。特に二審の控訴審では民法752条の夫婦間の同居と相互の扶養の義務から、第三者に対して配偶者の加害行為について責任を認定したのですが、民法752条は夫婦間の同居と相互の扶養の義務を定めたもので、第三者に対する何らかの責任を定めたものではありません。ですから平成26年4月の名古屋高裁判決はこの相互の扶養義務から、無理やり監督責任をひねり出した感じで、違和感は拭えませんでした。そこは今年3月の最高裁判決でははっきりと否定されて、夫婦や親族というだけでは、法定監督義務者には当たらないという妥当なところに行き着いたと思います。


平成28年3月1日最高裁判決(大府市JR事故)の備忘録

 
709条と714条の特徴
(不法行為による損害賠償)
第七〇九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

責任無能力者の監督義務者等の責任)
第七一四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

709条の不法行為責任について
 ある行為について予見義務があり、予見可能性があった場合に、結果回避義務を尽くさず、行為と損害の結果に因果関係があれば、損害賠償責任を負う。立証責任は、損害賠償を請求する側が全て負う。
①予見義務があり、
②予見可能性が認められ
③結果回避義務を怠ったこと
④相当因果関係
714条の法定監督義務者の責任(第1項)代理監督義務者の責任(第2項)
714条は、ほぼ無過失責任立証責任は監督義務者。名古屋高裁の本事件についての714条の性質について以下のように述べています。
「代償又は補充として,責任無能力者の監督義務者等に同損害に対する賠償責任を認めることで,被害者の保護及び救済を図ろうとするものであり,監督義務者等に監督上の過失があることをもって,監督義務者等に対する責任無能力者の加 害行為によって生じた損害の賠償責任の根拠とする点において過失責任主義の原理になお依拠しているものの,監督義務上の過失の不存在等の免責要件の存在の立証責任を監督義務者等に負担させるとともに,監督義務者 等の監督上の過失について,責任無能力者の加害行為そのものに対する過 失(責任無能力者のした具体的な加害行為を予見しこれを回避すべき義務としての直接的過失)ではなく,責任無能力者の生活全般に対する一般的 な監督義務上の過失(責任無能力者のした具体的な加害行為との関係では 間接的過失)で足りるものとする点で,無過失責任主義的な側面を強く有 する規定であり,その機能を実質的に観察するときには,監督義務者等に 対し,責任無能力者の加害行為によって生じた損害について責任無能力者に代わって賠償責任を負わせる面(代位責任的な面)のある規定であることも否定できない」
本件の前提事実

A :本人
Y1:本人Aの唯一の同居の親族の妻
Y2:本人の長男
B :Y2の妻
C 本人Aの妻Y2の妹 
平成14年3月の家族会議1
Y1平成14年8月22日要介護認定1
Aは34年に農協をやめてそれ以後不動産仲介業
被告三江は平成11年にヘルパー取得実家から10分介護施設勤務
Aは12年2月(84歳)ごろから認知症状
昭和57年から夫婦2人生活
60年にわたって同居していた妻に709条
B平成15年ヘルパー資格取得
C平成16年介護福祉士取得
本人妻Y1平成18年1月「要介護1」
平成19年2月に要介護2から4へ変更 
家族会議Ⅱで、本人妻Y1とBが介護することにした。
平成17年8月と平成18年12月の2回の徘徊で玄関付近にセンサー取り付け、Y1の枕元にチャイム
昼間は施錠、門扉に波板 かえって危険で、シャッターはやめたが、夜間はシャッター、施錠 昼間はセンサーは切っていた
平成19年2月23日Aは介護認定 要介護4
平成19年2月の家族会議2で、介護4の認定から特養検討、
Cの助言で自宅介護の選択
ヘルパーの契約もしなかったが、デイサービスには週6回
平成19年12月7日、事故当日、Bは午前7時にA宅に出向く
事故当日午後4時にデイサービスからA帰宅、自宅事務所で本人、B、本人妻Y1と3人でくつろいでいた。
Bが排尿したダンボールを片付けに目を離し、5時に戻ると本人妻Y1は居眠りし、Aはいなくなっていた。
Aは自宅近くのJR大府駅の改札を抜け、一駅先の共和駅まで列車に乗って移動。駅のプラットホーム端にある階段から線路に下りたとみられ、列車にはねられた。階段前には柵があったが、鍵のかかっていない扉から線路内に下りることができた。

平成20年10月2日遺産分割協議 金融資産だけで5000万円超過
本人妻Y1は不動産
Y2は主として不動産
Cは金融資産と不動産

平成22年2月 JR東海が遺族に損害賠償を求めて提訴
平成25年年8月 名古屋地裁が長男と男性の妻に、約720万円の支払いを命じる判決
平成26年4月 名古屋高裁が妻のみに約360万円の支払いを命じる判決
1審
家族会議2は本人妻Y1は参加していないと裁判所は認定
太郎の証人尋問で家族会議1と2でCの意見を尊重しつつ主導して介護方針を決定
上段家族内で家族会議を主催したからと言って何故第三者への法的義務が生じ714条の1項の法定監督義務者
立証責任の転嫁監督義務を尽くしたことを立証しない限り免責されない
介護、要するに責任無能力者たる認知症高齢者の介護をしていたからといって、事実上の監督者責任を負うというのはおかしい
Y1本人の唯一の同居の親族の妻
介護者であることから監護義務を認定
本人妻Y1に期待されていた役割 目を離さない義務

(同居、協力及び扶助の義務)
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
この規定は第四編「親族」の第二章「婚姻」の第2節「婚姻の効力」の中の規定

名古屋高裁は、この条文から以下のように監督義務を認定しました。(実際の認定ではこの条文+精神保健福祉法の保護者)
「配偶者の一方(夫又は妻)が老齢,疾病又は精神疾 患により自立した生活を送ることができなくなったなとどの場合には, 他方配偶者(妻又は夫)は,上記協力扶助義務として,他の配偶者 (夫又は妻)に対し,上記の趣旨において,その生活全般に対して配 慮し,介護し監督する身上監護の義務を負うに至るものというべきであり,婚姻関係にある配偶者間の信義則上又は条理上の義務としても, そのように解される」

最高裁は上記名古屋高裁の方解釈について以下のように否定しました。
「イ 民法752条は,夫婦の同居,協力及び扶助の義務について規定している が,これらは夫婦間において相互に相手方に対して負う義務であって,第三者との 関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課するものではなく,しかも,同居の義務についてはその性質上履行を強制することができないものであり,協力の義務についてはそれ自体抽象的なものである。また,扶助の義務はこれを相手方の生活を自分自身の生活として保障する義務であると解したとしても,そのことから直ちに第 三者との関係で相手方を監督する義務を基礎付けることはできない。そうすると, 同条の規定をもって同法714条1項にいう責任無能力者を監督する義務を定めたものということはできず,他に夫婦の一方が相手方の法定の監督義務者であるとす る実定法上の根拠は見当たらない。
したがって,精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである。」

民法714条はほぼ無過失責任に近い
本件名古屋高裁の引用
「当該責任無能力者を監督する法定 の義務を負う者(以下「監督義務者」という。)又は監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者(以下「代理監督義務者」といい,監督義務 者と併せて「監督義務者等」という。)は,監督義務を怠らなかったとき,又は監督義務を怠らなくても損害か生ずべきてあったときであること(以 下「免責事由」という。)を立証しない限り,上記損害について賠償責任を負うものとしている(同法714条1項,2項)」

②成年後見人は法定監督義務者ではない認定がなされた。平成11年の精神保健福祉法と民法の改正との関連
名古屋高裁は以下
(2) 控訴人Aの監督義務者等該当性
「ア 民法714条1項にいう監督義務者としては,一般に,未成年者である責任無能力者に対する親権者,精神上の障害による責任無能力者に対する成年後見人又は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(平成19年1 2月7日当時有効なもの。以下,これを「精神保健福祉法」という。)2 0条に基づく保護者が挙げられるところである」と説示しています。
つまり親権者は異論のないところですが、
①事故当時の精神保健福祉法の旧20条の保護者
②成年後見人
は法定監督義務者と当然のように定義しているのが非常に問題でした。専門職後見人は、親族ではないので、四六時中本人を監視することもできないのに、ほとんど無過失責任の714条の監督責任を負わないといけないことになります。
最高裁判所はこの点について上記の名古屋高裁の判断を破棄し、成年後見人と精神保健福祉法の保護者が714条法定監督義務者には該当しないとしました。
(1)ア 民法714条1項の規定は,責任無能力者が他人に損害を加えた場合に -7-
はその責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が損害賠償責任を負うべきもの としているところ,このうち精神上の障害による責任無能力者について監督義務が 法定されていたものとしては,平成11年法律第65号による改正前の精神保健及 び精神障害者福祉に関する法律22条1項により精神障害者に対する自傷他害防止 監督義務が定められていた保護者や,平成11年法律第149号による改正前の民 法858条1項により禁治産者に対する療養看護義務が定められていた後見人が挙 げられる。しかし,保護者の精神障害者に対する自傷他害防止監督義務は,上記平 成11年法律第65号により廃止された(なお,保護者制度そのものが平成25年 法律第47号により廃止された。)。また,後見人の禁治産者に対する療養看護義 務は,上記平成11年法律第149号による改正後の民法858条において成年後 見人がその事務を行うに当たっては成年被後見人の心身の状態及び生活の状況に配 慮しなければならない旨のいわゆる身上配慮義務に改められた。この身上配慮義務 は,成年後見人の権限等に照らすと,成年後見人が契約等の法律行為を行う際に成 年被後見人の身上について配慮すべきことを求めるものてあって,成年後見人に対 し事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや成年被後見人の行動を監 督することを求めるものと解することはてきない。そうすると,平成19年当時に おいて,保護者や成年後見人てあることたけては直ちに法定の監督義務者に該当す るということはできない。

関係法令
第858条
第1項 禁治産者の後見人は、禁治産者の資力に応じて、その療養看護に努めなければならない。
第2項 禁治産者を精神病院その他これに準ずる施設に入れるには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
明治33年精神病者監護法
監督義務者に由来
昭和25年 精神衛生法
保護者制度の創設
平成11年精神保健福祉法の改正
保護監督義務 自傷他害の防止義務の廃止
平成26年4月以降の精神保健福祉法
現行法33条 医療保護入院
 41条 退院時の引取義務

精神保健福祉法
(平成11年改正前)
第22条 保護者は、精神障害者に治療を受けさせるとともに、精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し、かつ、精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。
2 保護者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。
3 保護者は、精神障害者に医療を受けさせるに当たっては、医師の指示に従わなければならない。

(平成11年改正後平成26年3月まで)
第22条  保護者は、精神障害者(第二十二条の四第二項に規定する任意入院者及び病院又は診療所に入院しないで行われる精神障害の医療を継続して受けている者を除く。以下この項及び第三項において同じ。)に治療を受けさせ、及び精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない。
2  保護者は、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力しなければならない。
3  保護者は、精神障害者に医療を受けさせるに当たつては、医師の指示に従わなければならない。

(保護者)
第20条  精神障害者については、その後見人又は保佐人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護者となる。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は保護者とならない。
一  行方の知れない者
二  当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
三  家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四  破産者
五  成年被後見人又は被保佐人
六  未成年者
2  保護者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、次のとおりとする。ただし、本人の保護のため特に必要があると認める場合には、後見人又は保佐人以外の者について家庭裁判所は利害関係人の申立てによりその順位を変更することができる。
一  後見人又は保佐人
二  配偶者
三  親権を行う者
四  前二号の者以外の扶養義務者のうちから家庭裁判所が選任した者

(医療保護入院)
第33条  精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一  指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十二条の三の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二  第三十四条第一項の規定により移送された者

(保護者の引取義務等)
第41条  保護者は、第二十九条の三若しくは第二十九条の四第一項の規定により退院する者又は前条の規定により仮退院する者を引き取り、かつ、仮退院した者の保護に当たっては当該精神科病院又は指定病院の管理者の指示に従わなければならない。
平成26年4月施行
第20条の廃止
第33条  精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
1  指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
2  前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。
一  行方の知れない者
二  当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系 
血族
三  家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
四  成年被後見人又は被保佐人
五  未成年者
3  精神科病院の管理者は、第一項第一号に掲げる者について、その家族等(前項に規定する家族等をいう。以下同じ。)がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において、その者の居住地(居住地がないか、又は明らかでないときは、その者の現在地。第四十五条第一項を除き、以下同じ。)を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。第三十四条第二項の規定により移送された者について、その者の居住地を管轄する市町村長の同意があるときも、同様とする。


成年後見人と民法714条法監督義務者責任(1)

 平成16年2月25日の放課後,本件校庭において,友人らと共にサッカーボールを用いてフリーキックの練習をしていた
11歳の少年のけったボールが、バイクを運転していた80歳代の男性の前に転がってきて、避けようとした男性が転倒し、約1年半後に死亡したという 愛媛県今治市で起きた事案です。まずこの事件いついては、民法の条文の基本的理解が不可欠です。

——-以下民法条文——–
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
——-略——–

(責任能力)
第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

第713条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。

(責任無能力者の監督義務者等の責任)
第714条 前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
——-ここまで民法条文——–
不法行為責任を定めた条文は709条です。その不行為の加害者に責任能力がない場合(未成年者は712条、精神に障害がある場合は713条)は、714条で法定監督義務者が責任を負うことと、されています。
 (続く)


成年後見と障害者権利条約

気がつけば、1年以上も更新をっサボっていました。
今年1年間で一回も更新をしないと言うのは、非常にまずいと思い、更新させていただきます。
 言い訳になりますが、リーガルサポートの大役を引き受けたことあって、
1日に重複する会議、研修講師、執筆依頼などをこなしていると、つい更新をサボってまいりました。
 本当は本年2月19日に発効した時点で、意見を述べたかったのですが、立場上本音で全てを語ることも難しく、今まで悶々としていました。今も呪縛から開放されたわけではなく、事情は変わらないのですが、差し障り無い範囲で述べてみようと思います。

障害者権利条約12条は以下のとおり規定しています
「第十二条 法律の前にひとしく認められる権利
1.締約国は、障害者がすべての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2.締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者と平等に法的能力を享有することを認める。
3.締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用することができるようにするための適当な措置をとる。
4.締約国は、法的能力の行使に関連するすべての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保護を国際人権法に従って定めることを確保する。当該保護は、法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用すること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象とすることを確保するものとする。当該保護は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。
5.締約国は、この条の規定に従うことを条件として、障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用について均等な機会を有することについての平等の権利を確保するためのすべての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する」
 皆さんいかがでしょう、
この12条を踏まえ
一般的意見第1号(2014年)
2014年4月11日採択、2014年5月19日版
で障害権利委員会意見表明がなされてます。
Ⅰ.序論

1.法律の前における平等は、人権保護の基本的な一般原則であり、他の人権の行使に不可欠である。世界人権宣言と市民的及び政治的権利に関する国際規約では、法律の前における平等の権利を特に保障している。障害者権利条約第12条では、この市民的権利の内容をさらに詳しく説明し、障害のある人が、従来権利を否定されてきた分野に焦点を合わせている。第12条では、障害のある人の権利を新たに付け加えることはせず、障害のある人の法律の前における平等の権利を、他の者との平等を基礎として確保するために、締約国が考慮しなければならない具体的な要素について、説明しているにすぎない。

2.本条文の重要性を考慮し、委員会は、法的能力に関する議論のための対話型フォーラムを進めてきた。専門家、締約国、障害者団体、非政府機関、条約監視団体、国内人権機関及び国際連合機関による第12条の規定に関する極めて有益な意見交換から、委員会は、一般的意見においてさらなる指針を示すことが急務であると考えた。

3.これまで再検討されてきた、さまざまな締約国からの最初の報告に基づき、委員会は、条約第12条の下での締約国の義務の正確な範囲について、一般に誤解があることを認める。実際のところ、人権に基づく障害モデルが、代理人による意思決定のパラダイムから、支援付き意思決定に基づくパラダイムへの移行を意味するということは、これまで一般に理解されてこなかった。この一般的意見の目的は、第12条のさまざまな構成要素に由来する一般的義務を検討することである。

4.この一般的意見は、第3条に概略が述べられている条約の一般原則、すなわち、固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び人の自立に対する尊重、非差別、社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン、差異の尊重、人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容、機会の均等、アクセシビリティ、男女の平等、障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重、そして、障害のある子どもがそのアイデンティティを保持する権利の尊重を前提とした、第12条の解釈を反映している。

5.世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、障害者権利条約は、それぞれ、法律の前における平等な承認の権利は、「すべての場所において」有効であると明記している。つまり、国際人権法の下では、人が法律の前に人として認められる権利を剥奪されること、あるいは、この権利が制限されることは、いかなる状況においても許されない。これは、たとえ公の緊急事態であっても、この権利のいかなる適用除外も許されないと規定している、市民的及び政治的権利に関する国際規約第4条第2項によって強化される。これと同等な、法律の前における平等な承認の権利の適用除外に関する禁止条項は、障害者権利条約には明記されていないが、障害者権利条約の規定は既存の国際法から逸脱するものではないと定めている同条約第4条第4項に基づき、国際規約の規定により、この権利は保護される。

6.法律の前における平等の権利は、また、他の中核となる国際人権条約及び地域人権条約にも反映されている。女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第15条では、法律の前における女性の平等を保障し、男性との平等を基礎として、契約の締結、財産の管理及び司法制度における権利の行使に関して、女性の法的能力を認めることを義務付けている。人及び人民の権利に関するアフリカ憲章第3条では、法律の前におけるあらゆる人の平等の権利と、法律による平等な保護を享有する権利を規定している。米州人権条約第3条では、法的人格を認められる権利と、誰もが法律の前に人として認められる権利を、正式に定めている。

7.締約国は、障害のある人の法的能力の権利が、他の者との不平等に基づき制限されることのないよう、法律のあらゆる領域を総合的に検討しなければならない。歴史的に見て、障害のある人は、後見人制度や強制治療を認める精神保健法などの代理人による意思決定制度の下で、多くの領域において差別的な方法で、法的能力の権利を否定されてきた。障害のある人が、他の者との平等を基礎として、完全な法的能力を回復することを確保するためには、これらの慣行は廃止されなければならない。

8.条約第12条は、障害のあるすべての人が、完全な法的能力を有することを認めている。歴史を通じて、女性(特に結婚時)や少数民族をはじめとする多くの集団が、偏見を理由にその法的能力を否定されてきた。しかし、障害のある人は、依然として、世界各地の法制度において、最も頻繁にその法的能力を否定されている集団なのである。法律の前における平等な承認の権利とは、法的能力が、すべての人の人間性に基づく固有の普遍的な属性であり、障害のある人にも、他の者との平等を基礎として常に認められなければならないことを意味する。法的能力は、市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利の行使に欠かせない。それは、障害のある人が自分自身の健康、教育及び仕事に関する基本的な決定を下さなければならないときに、特に重要となる。(障害のある人々の法的能力の否定は、多くの場合、投票する権利、婚姻をし、家族を形成する権利、性と生殖の権利、親の権利、親密な関係と医学的治療に関して同意する権利、自由の権利など、多数の基本的権利の剥奪をもたらしてきた。)

9.身体障害、精神障害、知的障害又は感覚機能障害などの障害のある人は皆、法的能力の否定と、代理人による意思決定による影響を受ける可能性がある。しかし、認知障害や心理社会的障害のある人は、これまでも、また今もなお、代理人による意思決定制度と法的能力の否定による影響を過度に受けている。委員会は、障害のある者としての地位や、(身体機能障害又は感覚機能障害を含む)機能障害の存在が、決して、第12条に規定されている法的能力や権利を否定する理由となってはならないことを再確認する。目的又は効果において第12条を侵害するすべての慣行は、障害のある人が他の者との平等を基礎として完全な法的能力を確実に回復できるように、廃止されなければならない。

10.この一般的意見は、おもに第12条の規範的内容と、新たに発生する締約国の義務に焦点を合わせている。委員会は、今後の総括所見、一般的意見及びその他の公文書と併せて、引き続き、この分野における活動に取り組み、第12条に定められた権利と義務のさらに詳細な説明(guidance)を提供していく。

Ⅱ.第12条の規範的内容

第12条第1項

11.第12条第1項では、障害のある人が、法律の前に人として認められる権利を有することを再確認している。これは、あらゆる人間が、法的人格を所有する人として尊重されることを保障するものである。これは人の法的能力の承認のための前提条件である。

第12条第2項

12.第12条第2項は、障害のある人が、生活のあらゆる側面において、他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認めている。法的能力には、権利所有者になる能力と、法律の下での行為者になる能力の両方が含まれる。権利所有者になる法的能力により、障害のある人は、その権利を法制度によって完全に保護される資格を得る。法律の下での行為者になる能力により、人は、取引に携わり、法的な関係全般を構築し、修整し、あるいは終結させる権限を伴う主体として認められる。法的主体として認められる権利は、条約第12条第5項で規定されており、そこでは締約国の義務について、「財産の所有又は相続についての、自己の財務管理についての並びに銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信用への平等なアクセスについての障害のある人の平等な権利を確保するためのすべての適切かつ効果的な措置をとる。締約国は、また、障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する」と、概説している。

13.法的能力と意思決定能力とは、異なる概念である。法的能力は、権利と義務を所有し(法的地位)、これらの権利と義務を行使する(法的主体性)能力である。それは社会への有意義な参加のための重要な鍵となる。意思決定能力とは、個人の意思決定スキルを言い、当然、人によって異なり、同じ人でも、環境要因及び社会的要因など、多くの要因によって変化する可能性がある。これまで、世界人権宣言(UDHR)(第6条)、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)(第16条)及び女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)(第15条)などの法律文書において、意思決定能力と法的能力は明確に区別されてこなかった。現在、障害者権利条約(第12条)は、「精神の異常」とその他の差別的レッテルが、法的能力(法的地位と法的主体性)の否定の合法的な理由にはならないことを明確に謳っている。条約第12条の下では、認識された、あるいは実際の意思決定能力の不足が、法的能力の否定を正当化するものとして利用されてはならない。

14.法的能力は、障害のある人を含むすべての人に与えられる固有の権利である。指摘されたように、これは二つの要素から成る。第一の要素は、権利を有し、法律の前に法的人格として認められる法的地位である。これには、たとえば、出生証明書を得ること、医療扶助を求めること、選挙人名簿に登録することと、パスポートを申請することが含められる。第二の要素は、これらの権利に基づいて行動し、それらの行動を法律で認めてもらう法的主体性である。障害のある人が、しばしば否定され、あるいは制限されるのは、この要素である。たとえば、障害のある人の財産の所有は法律で認められているが、その売買に関する行動は必ずしも尊重されていない。法的能力とは、障害のある人を含むすべての人が、単に人間であるという理由に基づき、法的地位と法的主体性を有することを意味する。それゆえ、法的能力に関するこれらの要素はともに、障害のある人が実現すべき法的能力の権利として認められなければならない。これらは分けることはできないのである。
 意思決定能力という概念は、それ自体、極めて議論の余地がある。それは、一般的に示されるような客観的、科学的及び自然発生的な現象ではない。意思決定能力は、意思決定能力の評価において支配的な役割を果たす領域、専門職、慣行がそうであるように、社会的及び政治的文脈に左右される。

15.これまで委員会が審査してきた締約国の報告の大半において、意思決定能力と法的能力の概念は同一視され、多くの場合、認知障害又は心理社会的障害により意思決定スキルが低下していると見なされた者は、結果的に、特定の決定を下す法的能力を排除されている。これは単純に、機能障害という診断に基づいて(状況に基づくアプローチ)、あるいは、否定的な結果をもたらすと考えられる決定を本人が行っている場合(結果に基づくアプローチ)、もしくは、本人の意思決定スキルが不足していると見なされる場合(機能に基づくアプローチ)に決定される。機能に基づくアプローチでは、意思決定能力の評価と、その結果としての法的能力の否定が試みられる。ある決定の性質と結果を理解できるかどうか、及び/又は関連情報を利用したり、比較検討したりできるかどうかによって決まることが多い。機能に基づくこのアプローチは、二つの重要な理由から誤っている。(a)それは障害のある人に対して差別的な方法で適用されている。(b)それは人間の内なる心の動きを正確に評価できるということと、その評価に合格しない場合、法の前における平等な承認の権利という、中核となる人権を否定できるということを前提としている。これらのアプローチのすべてにおいて、障害及び/又は意思決定スキルが、個人の法的能力を否定し、法律の前における人としての地位を下げる合法的な理由と見なされている。第12条は、法的能力に対するそのような差別的な否定を許容するものではなく、むしろ、法的能力の行使における支援の提供を義務付けるものである。

第12条第3項

16.第12条第3項では、障害のある人がその法的能力の行使に当たり必要とする支援にアクセスすることができるようにする義務を、締約国が有すると認めている。締約国は、障害のある人の法的能力を否定することを避けなければならず、むしろ、障害のある人が法的効力のある決定を下せるようになるために必要と考えられる支援へのアクセスを提供しなければならない。

17.法的能力の行使における支援では、障害のある人の権利、意思及び選好を尊重し、決して代理人による意思決定を行うことになってはならない。第12条第3項は、どのような形式の支援を行うべきかについては具体的に定めていない。「支援」とは、さまざまな種類と程度の非公式な支援と公式な支援の両方の取り決めを包含する、広義の言葉である。たとえば、障害のある人は、1人又はそれ以上の信頼のおける支援者を選び、特定の種類の意志決定にかかわる法的能力の行使を援助してもらうことや、ピアサポート、(当事者活動の支援を含む)権利擁護、あるいはコミュニケーション支援など、その他の形態の支援を求めることができる。障害のある人の法的能力の行使における支援には、例えば、銀行及び金融機関などの官民のアクターに対し、障害のある人が銀行口座の開設や、契約の締結、あるいはその他の社会的取引の実行に必要な法的行為を遂行できるように、理解しやすいフォーマットでの提供や専門の手話通訳者の提供を義務付けるなど、ユニバーサルデザインとアクセシビリティに関する措置も含まれる場合がある。また、特に意思と選考を表明するために非言語型コミュニケーション形式を使用している者にとっては、従来にない多様なコミュニケーション方法の開発と承認も支援となり得る。障害のある多くの人にとって、事前計画が可能であるということは、支援の重要な一形態であり、これにより自らの意思と選好を示すことができ、他者に希望を伝えられない状況にある場合は、これに従ってもらうことになる。障害のあるすべての人には、事前計画に参加する権利があり、他の者との平等を基礎として、その機会が与えられなければならない。締約国は、さまざまな形の事前の計画の仕組みの選択肢を、多様な選好に合わせて提供することができるが、すべての選択肢は非差別的でなければならない。事前計画のプロセスを完了することを求められた場合、個別に支援が提供されなければならない。事前の指示が効力を持つようになる(及び効力を失う)時点は、障害当事者によって決定され、指示の本文に記載されなければならず、当事者の意思決定能力が不足しているという評価に基づいて決定されてはならない。

18.提供される支援の種類と程度は、障害のある人の多様性のために、人によって著しく異なる。これは、条約の一般原則の1つとして、「差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容」を定めた第3条(d)と一致している。個人の自律と障害のある人の意思決定能力は、危機的状況下を含め、常に尊重されなければならない。

19.障害のある人の中には、第12条第2項にある、他の者との平等を基礎とした法的能力の権利の承認のみを追求し、第12条第3項に規定されている支援を受ける権利の行使を希望しない者もいる。

第12条第4項

20.第12条第4項は、法的能力の行使を支援するシステムになくてはならない保護措置の概要を説明している。第12条第4項は、第12条の他の部分及び条約全体と併せて理解されなければならない。それは締約国に対し、法的能力行使のための適切かつ効果的な保護措置を創設することを義務付けている。これらの保護措置のおもな目的は、個人の権利、意思及び選好の尊重を確保することでなければならない。これを達成するために、保護措置により、他の者との平等を基礎として、濫用からの保護を提供しなければならない。

21.著しい努力がなされた後も、個人の意思と選好を決定することが実行可能ではない場合、「意思と選好の最善の解釈」が「最善の利益」の決定に取ってかわらなければならない。これにより、第12条第4項に従い、個人の権利、意思及び選好が尊重される。「最善の利益」の原則は、成人に関しては、第12条に基づく保護措置ではない。障害のある人による、他の者との平等を基礎とした法的能力の権利の享有を確保するには、「意思と選好」のパラダイムが「最善の利益」のパラダイムに取ってかわらなければならない。

22.すべての人は「不当な影響」の対象となる危険があるが、意思決定を他者の支援に依存している者の場合、これが悪化する可能性がある。不当な影響は、支援者と被支援者の相互作用の質として、恐怖、敵意、脅威、欺瞞又は改ざんの兆候が見られることを特徴とする。法的能力の行使に関する保護措置には、不当な影響からの保護を含めなければならない。しかし、この保護は、危険を冒し、間違いを犯す権利を含む、個人の権利、意思及び選好を尊重するものでもなければならない。

第12条第5項

23.第12条第5項では、締約国に対し、金融及び経済的問題に関して、障害のある人の権利を他の者との平等を基礎として確保するために、立法上、行政上、司法上及びその他の実践的な措置を含む措置をとることを義務付けている。金融及び財産への障害のある人のアクセスは、障害の医学モデルに基づき、これまで否定されてきた。障害のある人の金融問題にかかわる法的能力を否定するこのようなアプローチは、第12条第3項に従い、法的能力の行使に対する支援に置き換えられなければならない。ジェンダーが、金融と財産の分野(注1)における差別の理由として利用されてはならないように 、障害もこれに利用されてはならない。

Ⅲ.締約国の義務

24.締約国は、あらゆる種類の障害のあるすべての人の、法律の前における平等な承認の権利を尊重し、保護し、実現する義務を有する。この点に関して、締約国は、障害のある人の、法律の前における平等な承認の権利を剥奪するいかなる行動も避けなければならない。締約国は、障害のある人が法的能力の権利を含む人権を実現し、享有する能力を、非国家主体及び民間人が妨害しないようにするために、行動を起こさなければならない。法的能力の行使を支援する目的の1つは、障害のある人の自信とスキルを確立し、彼らが将来望むなら、より少ない支援でその法的能力を行使できるようにすることである。締約国は、支援を受ける人が法的能力の行使において、支援を減らしてもよいとき、あるいは支援を必要としなくなったときに、その判断が下せるように、研修を行う義務を有する。

25.すべての人が(障害や意思決定スキルにかかわらず)生まれながらに持つとされる法的能力、すなわち「普遍的な法的能力」を、全面的に認めるには、締約国は、目的又は効果において障害に基づく差別となる法的能力の否定を廃止しなければならない。(注2)

26.障害者権利委員会は、第12条に関する締約国の最初の報告の総括所見において、関係締約国は「後見人制度及び信託制度を許可する法律を見直し、代理人による意思決定制度を、個人の自律、意思及び選好を尊重した支援付き意思決定に置き換える法律と政策を開発する行動を起こす」必要がある、と繰り返し述べてきた。

27.代理人による意思決定制度は、全権後見人、裁判所による禁治産宣告、限定後見人など、多種多様な形態をとり得る。しかし、これらの制度には、ある共通の特徴がある。すなわち、これらは以下のシステムとして定義できる。(i)個人の法的能力は、たとえそれが1つの決定にのみかかわりのある法的能力であっても、排除される。(ii)当事者以外の者が代理意思決定者を任命できる。しかも、当事者の意思に反してこれを行うことができる。(iii)代理意思決定者によるいかなる決定も、当事者の意思と選好ではなく、客観的に見てその「最善の利益」となると思われることに基づいて行われる。

28.代理人による意思決定制度を支援付き意思決定に置き換えるという締約国の義務では、代理人による意思決定制度の廃止と、支援付き意思決定による代替策の開発の両方が義務付けられている。代理人による意思決定制度を維持しながら支援付き意思決定システムを開発しても、条約第12条の順守には十分ではない。

29.支援付き意思決定制度は、個人の意志と選好に第一義的重要性を与え、人権規範を尊重するさまざまな支援の選択肢から成る。それは、自律に関する権利(法的能力の権利、法律の前における平等な承認の権利、居所を選ぶ権利など)を含むすべての権利と、虐待及び不適切な扱いからの自由に関する権利(生命に対する権利、身体的なインテグリティを尊重される権利など)を保護するものでなければならない。さらに、支援付き意思決定システムは、障害のある人の生活を過剰に規制するものであってはならない。支援付き意思決定制度は、多様な形態をとる可能性があり、それらすべてに、条約第12条の順守を確保するための特定の重要な規定が盛り込まれなければならない。それには、以下が含まれる。
 (a) 支援付き意思決定は、すべての人が利用可能でなければならない。個人の支援ニーズのレベル(特にニーズが高い場合)が、意思決定の支援を受ける上での障壁となってはならない。
 (b) 法的能力の行使におけるあらゆる形式の支援(より集約的な形式の支援を含む。)は、客観的に見て個人の最善の利益と認識されることではなく、個人の意志と選好に基づいて行われなければならない。
 (c) 個人のコミュニケーション形態は、たとえそのコミュニケーションが従来にないものであっても、あるいは、ほとんどの人に理解されないものであっても、意思決定の支援を受ける上での障壁となってはならない。
 (d) 個人によって正式に選ばれた支援者の法的承認が利用可能であり、かつ、これを利用する機会が与えられなければならず、国は、特に孤立しており、地域社会で自然に発生する支援へのアクセスを持たない可能性がある人々のために、支援の創出を促進する義務を有する。これには、第三者が支援者の身元を確認する仕組みと、支援者が当事者の意志と選好に基づいた行動をしていないと第三者が考える場合、支援者の行動に対して第三者が異議を申し立てられる仕組みを含めなければならない。
 (e) 条約第12条第3項に定められている、締約国は必要とする支援に「アクセスすることができるようにするための」措置をとらなければならないという要件に従うため、締約国は、障害のある人がわずかな料金で、あるいは無料で、支援を利用でき、財源不足が法的能力の行使における支援にアクセスする上での障壁とならないことを確保しなければならない。
 (f) 意思決定の支援は、障害のある人の他の基本的権利、特に、投票する権利、婚姻をし(あるいは市民パートナーシップを確立し)、家族を形成する権利、性と生殖の権利、親の権利、親密な関係と医学的治療に関して同意する権利、自由の権利を制限する正当な理由として、利用されてはならない。
 (g) 人は、いかなる時点でも、支援を拒否し、支援関係を終了し、あるいは変更する権利を持つものとする。
 (h) 法的能力と、法的能力の行使における支援にかかわるあらゆるプロセスについて、保護措置が設けられなければならない。保護措置の目標は、個人の意志と選好の尊重を確保することである。
 (i) 法的能力の行使における支援の提供は、意思決定能力の評価に左右されるべきではない。法的能力の行使における支援の提供では、支援のニーズに関する新しい非差別的な指標が必要とされている。

30.法律の前における平等の権利は、市民的及び政治的権利に関する国際規約に根ざし、市民的及び政治的権利として長年認められてきた。市民的及び政治的権利は、条約批准の瞬間に付随するもので、締約国はこれらの権利を直ちに実現するための措置をとる必要がある。しかるに、第12条に定められている権利は、批准の瞬間に適用され、即時の実現の対象となる。第12条(3)にある、法的能力の行使のための支援に対するアクセスを提供するという締約国の義務は、法律の前における平等な承認に向けた市民的及び政治的権利の実現に必要な締約国の義務なのである。漸進的実現(第4条第2項)は、第12条には適用されない。締約国は、批准時に、第12条にある権利の実現に向けた措置をとることを、ただちに始めなければならない。これらの措置は、慎重な検討の上、十分に計画されたものでなければならず、障害のある人及びその団体と協議し、その有意義な参加を得なければならない。

Ⅳ.条約の他の規定との関係

31.法的能力の承認は、障害者権利条約に定められている他の多くの人権の享有と、切っても切れない関係がある。これらの人権には、司法へのアクセス(第13条)、精神保健施設への強制的な監禁からの自由の権利と、精神保健治療を強制的に受けさせられることがない権利(第14条)、身体的及び精神的なインテグリティを尊重される権利(第17条)、移動の自由及び国籍の権利(第18条)、どこで誰と生活するかを選択する権利(第19条)、表現の自由の権利(第21条)、婚姻をし、家族を形成する権利(第23条)、医学的治療に同意する権利(第25条)、投票し、選挙に立候補する権利(第29条)が含まれるが、これらに限定されない。法律の前に人として認められなければ、これらの権利と、条約で定められている他の多くの権利を主張し、行使し、強化する能力は、著しく低下する。

第5条:平等及び非差別

32.法の前における平等な承認を達成するためには、法的能力が差別的に否定されてはならない。条約第5条は、法律の前及び下におけるすべての人の平等と、法律による平等な保護を受ける権利を保障している。また、障害に基づくあらゆる差別を明確に禁止している。障害に基づく差別は、条約第2条に「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう」と定義されている。障害のある人の法律の前における平等な承認の権利を妨げる目的又は効果を有する、法的能力の否定は、条約第5条及び第12条の侵害である。実際には、国は、破産や刑事上の有罪判決などの特定の状況を理由に、個人の法的能力を制限することができる。しかし、法律の前における平等な承認と差別からの自由の権利は、国が法的能力を否定する場合、すべての人に対して同じ基準に基づいて行わなければならないということを義務付けるものである。法的能力の否定は、ジェンダー、人種又は障害などの個人的な特性に基づいて行われてはならず、また、そのような特性を持つ人々に対し、異なった扱いをする目的や効果を有するものであってはならない。

33.法的能力の承認における差別からの自由は、条約第3条(a)に正式に記されている原則に基づき、個人の自律を回復し、人間としての尊厳を尊重するものである。自分自身で選択をする自由には、多くの場合、法的能力が必要となる。自立と自律には、個人の決定を法的に尊重してもらうための力が伴う。意思決定における支援と合理的配慮のニーズが、個人の法的能力を疑問視することに利用されてはならない。差異の尊重と、人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容(第3条(d))は、同化主義に基づく法的能力の付与とは相いれない。

34.非差別には、法的能力の行使において合理的配慮(第5条第3項)を受ける権利が含まれる。合理的配慮は、条約第2条で、「障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないもの」と定義されている。法的能力の行使において合理的配慮を受ける権利は、法的能力の行使において支援を受ける権利とは別であり、これを補完するものである。締約国は、障害のある人が法的能力を行使できるよう、不釣り合いな又は過剰な負担ではない限り、変更や調整を行う義務がある。そのような変更や調整には、裁判所、銀行、社会福祉事務所、投票所などの生活に不可欠な建物へのアクセス、法的効力を有する決定に関するアクセシブルな情報、パーソナルアシスタンスが含められるが、これらに限定されない。法的能力の行使において支援を受ける権利は、不釣り合いな又は過重な負担の主張によって制限されてはならない。国は、法的能力の行使における支援へのアクセスを提供する、明白な義務を有する。
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基本的に障害者の権利を擁護するための条約なので、大筋では賛成なのですが、問題が無いわけではありません。今後それを指摘してみたいと思います。


 成年後見人選任の当否と後見開始の審判に対する即時抗告

後見開始の審判に対しては不服申し立てをすることができますが、後見人選任の審判については不服申し立てをすることはできません。

後見開始の審判に対する不服の申し立ての条文
 (家事事件手続法)
第百二十三条  次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者(第一号にあっては、申立人を除く。)は、即時抗告をすることができる。
一  後見開始の審判 民法第七条 及び任意後見契約法第十条第二項 に規定する者
(以下略)

後見人の専任が裁判所の職権・専権事項である条文
(民法)
(成年後見人の選任)
第843条 1.家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
2.成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
3.成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
4.成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

成年後見の開始は必ず申し立てによって始まります。
ですから、後見開始の審判は、不服申立の制度があるのです。
それと同時にされる成年後見人選任の審判は裁判所の職権、つまり専権事項ということになり、誰を後見人にするかについて、不服を申立てる制度はありません。


被後見人の選挙権の行使

ずいぶんご無沙汰してしまいました。

涼しげなかも

夏の参議院選から、被後見人の選挙権が回復し、大阪司法書士会でも指針を出したりして、

話題にはなっていました。

結局、私が就任ている成年後見事件の被後見人さんのうち、実際に選挙権を行使したのはお一人だけでした。

それでも、選挙権が回復されたのは良いことですし、まだ他にも被後見人ということで権利制限されている場合が

少なくありません。まだ出発点で改善しなければならないことはたくさんあります。

今後は、それが、問題になってくると思います。


成年後見、参院選から選挙権回復 与野党合意

47ニュースから

http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013051401002114.html

与野党は14日午後、成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定を削除して被後見人に一律に選挙権を付与する同法改正案について合意した。夏の参院選から選挙権を回復させる。各党の了承手続きを経て、17日にも議員立法として共同で国会提出し、月内に成立させる運びだ。

自民、公明両党が呼び掛けて国会内で開かれた協議には新党改革を除く与野党9党の実務者らが出席。野党側から「重要な公選法改正案なので質疑は必要だ」との意見が相次ぎ、委員会での審議を省くことは見送った。新党改革は事前に賛成の意向を伝えた。

-ここまで-

7月の参院選では被後見人の選挙権は復活することがほぼ決まったといってもいい情勢です。

そこで、考えないといけないのが、後見人が、被後見人の選挙権の行使をどうやって保証するかですね。
後見人が選挙制度をちゃんと熟知している必要があります。