相続放棄の熟慮期間3ヶ月と戸籍届記載事項証明書

民法
第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
 
 と民法には記載されています。この相続の開始のあったことを知った時から3ヶ月(いわゆる熟慮期間)とありますが、
 何時から3ヶ月? なのでしょうか。
 経験上、被相続人が亡くなって2年経過後に相続放棄を申し立てて受理されることもありました。結局、被相続人と相続人の関係(親子か兄弟姉妹か)、あるいは、被相続人と同居か別居か、が大きなポイントになることが多いですね。同じ被相続人の子であっても、結婚し、長年別居で親と疎遠になっていたの次女は放棄が認められ、同居の長男は認められないというようなこともありました。
大阪家庭裁判所

家庭裁判所:親子や夫婦等の場合は即日受理の制度もあります

 夫婦で離婚はせず、長年別居し、どのような生活をしているかも知らないという状況の奥さんから過去にこんな相談がありました。
夫は借金を抱えてたまま死亡したが、自分がその死亡を知ったのは半年後で、その相談の日から、1週間前のことだった。
相続放棄はもうできないのですかという趣旨の相談でした。私はそれなら、放棄は問題ないでしょうと回答し、本籍地で戸籍謄本を取得してもらいました。
 すると、驚いたことに戸籍の死亡の記載事項中、相談者であるその奥さんが死亡届を出したことになっていました。当然これは、夫の知人がその奥さんを装って、提出したものと思われます。しかし、このまま、戸籍謄本を提出して、相続放棄の申述をしても受理されないと思い、どうするか、考えた末に、届出の筆跡の違いを証明するため、戸籍届記載事項証明書を取得してもらうことにしました。それと、本人の過去に役所に提出した書類(申告書など)との筆跡が全く違うことと、長年別居していた事実等を上申書にまとめて、申立書に添付したところ、無事に放棄の申述は受理されたのでした。
 本人にとっては冷や汗ものだったでしょうね。