成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律

  本年4月に成立した「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が10月13日に施行されました。
 主に、成年被後見人宛の郵便物を後見人に裁判所の審判を経て転送できるようになること、一定の死後事務ができるようになること、この2点が改正点です。
 誤解されがちですが、いずれの規定も、成年後見人の権限を拡大したものであり、義務を定めたものではないといことです。
成年後見人に対する郵送の嘱託は、被後見人の財産調査(株式、投資信託、外貨預金等)をする上では、有用な制度ですが、憲法21条2項で通信の秘密の規定を踏まえ、その運用には十分な注が必要です。本人の情報が十分に把握できているケースの場合は、当該嘱託は不要であると考えられます。また一定の死後事務についても、成年後見人の権限の範囲内であることが、民法上明記されました。
 

以下条文

 (成年後見人による郵便物等の管理)
 第八百六十条の二 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
 2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
 3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
 4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
 第八百六十条の三 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
 2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
 3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。
 
  (成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
 第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
  一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
  二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
  三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)

法務省の解説はこちら
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00196.html